【行政書士 内容】行政書士は何をする人?取り扱い業務や役割をわかりやすく解説

行政書士のイメージ

行政書士とは?その役割と意義

行政書士は、官公署に提出する書類の作成や手続き代行、相談業務を行う国家資格者です。法律に基づいた実務サポートを提供する専門職として、企業活動から個人の生活まで、さまざまな場面で必要とされます。

法律職というと弁護士や司法書士を思い浮かべる人が多いですが、行政書士は「行政」に関わる領域に特化しており、書類作成とその提出手続きのプロフェッショナルとして活動します。行政書士法に基づいてその業務が定められており、書類の作成に関して独占業務を持っている点も大きな特徴です。

また、行政書士は業務の幅が非常に広く、年間1000種類以上の書類を取り扱うことができるとも言われています。そのため、開業後の業務選択や専門分野の構築によって、働き方や収入にも大きな差が出る資格でもあります。

行政書士が取り扱う業務一覧と特徴【概要編】

行政書士の業務は大きく以下の3つに分類されます:

  • 1. 官公署に提出する書類の作成・提出代行
  • 2. 権利義務・事実証明に関する書類の作成
  • 3. 各種相談業務

たとえば、法人設立・許認可申請・契約書の作成・遺言書の文案作成・内容証明郵便の作成などが含まれます。以下に、代表的な取り扱い分野を紹介します。

業務分野 概要 主な対象
許認可業務 建設業、飲食店、古物商などの営業許可申請 法人・個人事業主
法人設立支援 株式会社や合同会社などの設立時の書類作成 起業家・事業主
遺言・相続支援 遺言書の作成補助、相続関係説明図の作成 個人・相続人
外国人関連業務 在留資格の取得・更新、帰化申請書類の作成 外国籍の個人・企業
契約書作成・内容証明 契約書やクレーム対応文書などの作成代行 個人・法人

このように、行政書士の業務は多岐にわたり、対象となるクライアントも企業・個人問わず広範囲に及びます。次回は、これらの業務を一つひとつ深堀りし、具体的な実務内容や必要な知識について解説していきます。

各業務を徹底解説|行政書士が扱う具体的な業務内容

1. 許認可業務

行政書士業務の中で最も代表的なのが「許認可業務」です。これは、事業活動を開始するために必要な官公署からの許可や認可を得るための書類を作成・提出する業務です。

例としては以下のようなものがあります:

  • 建設業許可
  • 風俗営業許可
  • 産業廃棄物収集運搬業許可
  • 宅建業免許
  • 飲食店営業許可
  • 古物商許可

これらの申請は、法律に基づく厳密な条件があるため、正確な書類作成と適切な提出手順が求められます。クライアントは事業主や企業であることが多く、継続的な依頼につながることも特徴です。

2. 法人設立支援

行政書士は、株式会社・合同会社・一般社団法人などの設立をサポートします。具体的には以下のような業務を行います:

  • 定款の作成(電子定款対応含む)
  • 設立登記に必要な書類の作成
  • 許認可とセットでの法人設立パッケージ

特に、建設業・人材派遣業など許認可が必要な業種では、法人設立と許可取得がセットになるケースが多く、行政書士の出番が多くなります。

3. 相続・遺言関連業務

高齢社会を背景にニーズが増えている分野です。行政書士は以下のようなサポートを行います:

  • 自筆証書遺言・公正証書遺言の文案作成
  • 相続人の調査
  • 相続関係説明図・財産目録の作成
  • 遺産分割協議書の作成支援

相続問題は感情的にも複雑になりやすいため、丁寧な対応と信頼構築が重要となります。弁護士や税理士との連携が必要な場合もあります。

4. 外国人関連業務

国際化が進む中、外国籍の方に対する支援業務も行政書士の重要な分野です。たとえば:

  • 在留資格認定証明書交付申請
  • 在留期間更新・変更許可申請
  • 永住許可申請
  • 帰化申請に関する書類作成

書類作成だけでなく、日本語での説明や文化的配慮も求められるため、外国人とのコミュニケーション能力や専門性が問われる業務です。

5. 契約書作成・内容証明

行政書士は、権利義務・事実証明に関する書類作成の専門家として、以下のような業務を行います:

  • 売買契約書・業務委託契約書の作成
  • 離婚協議書の作成
  • 金銭トラブルに関する内容証明郵便の作成

民間トラブルの予防・解決に役立つ文書を作成することが行政書士の重要な役割です。ただし、訴訟や代理交渉は弁護士の業務領域となるため、線引きも重要になります。

以上のように、行政書士が対応できる業務は多岐に渡り、それぞれに専門性が求められます。今後は、これらの業務が実際の現場でどのように行われているか、具体的な1日の流れや必要なスキルについて掘り下げていきましょう。

行政書士の1日の仕事の流れ

行政書士の1日は、業務内容や働き方によって大きく異なります。ここでは、個人で開業している行政書士の一般的な1日のスケジュール例を紹介します。

時間帯 主な業務内容
8:30〜9:00 メールチェック、スケジュール確認
9:00〜11:00 書類作成、法令調査、官公署への問合せ
11:00〜12:30 クライアントとの面談・打ち合わせ
13:30〜15:00 役所訪問・書類提出
15:00〜17:30 契約書作成、業務報告書の作成
17:30〜18:00 明日の準備、タスク整理

上記は一例であり、オンライン対応が多い行政書士や、特定業務に特化した人では時間配分が異なります。中には夜間・土日の相談に対応するケースもあり、クライアントニーズに合わせて柔軟に対応する必要があります。

行政書士に求められるスキルと知識

法律知識と文書作成能力

行政書士にとってもっとも基本的かつ重要なのが、法律に関する知識と、正確な文書作成能力です。行政手続きや契約関連では、条文や判例を読み解く力、法的根拠に基づいた文書を作る力が不可欠です。

コミュニケーション能力

クライアントの多くは法的手続きに不安や疑問を持っています。専門用語を噛み砕いて説明し、信頼関係を築くコミュニケーション力が必要不可欠です。特に相続や外国人支援など、感情面への配慮も求められます。

情報収集力と自己研鑽

法改正や行政手続きの変更は頻繁にあります。そのため、常に最新情報にアンテナを張り、継続的な学習と法令のチェックが欠かせません。業界セミナーや勉強会に積極的に参加する行政書士も多くいます。

ITスキル・電子申請対応

電子申請やオンライン対応が主流になりつつある今、パソコンスキルや電子署名の知識も不可欠です。依頼者との連絡もメールやチャットを使うことが増えており、ITリテラシーは高めておくべきスキルとなっています。

これらのスキルは一朝一夕で身につくものではありませんが、現場経験を積むことで自然と向上していきます。次回は、こうしたスキルを活かしながら行政書士が活躍する分野と、時代に合わせて変化する業務の姿について解説していきます。

AI・電子申請時代に変化する行政書士の業務

デジタル庁の創設やマイナンバー制度の普及など、日本でも行政のデジタル化が急速に進んでいます。これにより、行政書士の業務にも大きな変化が訪れています。

電子申請の拡大と行政書士の対応

各種許認可申請や法人設立など、これまで紙で提出していた書類が、電子申請による提出に切り替わりつつあります。行政書士には電子証明書や電子署名に関する知識が求められ、対応できるか否かで仕事の幅に差が出てきます。

また、クライアントも「オンラインで完結したい」というニーズが高まっており、Zoomやクラウド型ファイル共有などを活用した非対面型業務が増えています。

AIによる文書作成の代替と専門性の深化

ChatGPTなどの生成AIの登場により、定型的な文書作成の一部は自動化が進む可能性があります。実際、契約書のドラフトや申請書のテンプレート作成にAIを活用している行政書士も現れています。

その一方で、複雑な法的判断が必要な業務、状況に応じたアドバイスや相談対応などは、人間の専門的判断が不可欠な領域です。AIの台頭により、行政書士にはより高度な専門性と付加価値の提供が求められるようになっています。

業務ごとの収益性と実務ポイント

行政書士の業務は多岐にわたりますが、それぞれの業務ごとに収益性や業務の難易度、継続性などに違いがあります。以下は代表的な業務についてのポイントです。

業務種別 収益性 リピート性 ポイント
建設業許可申請 高め(5〜15万円) 高い(更新・変更申請あり) 地域密着での継続受注が可能
法人設立 中(3〜10万円) やや低い(単発) 許認可とセットで受注すると有利
相続・遺言 中〜高(5〜20万円) 低い(基本単発) 信頼関係が最重要。丁寧な対応を
外国人支援 高め(8〜30万円) 高い(更新・変更あり) 専門性が強く差別化しやすい
契約書・内容証明 低〜中(1〜5万円) 低め トラブル予防ニーズの掘り起こしが重要

このように、行政書士業務には一回きりのスポット業務と、定期的な更新や管理が必要なリピート業務が存在します。戦略的に業務を選び、自分の専門分野を確立することが、安定収入への近道になります。

行政書士として独立・開業するには?

行政書士は「開業がしやすい士業」としても知られています。特別な開業資金や設備がなくても、資格登録と事務所さえあればスタートが可能です。ここでは、独立開業に必要なステップを解説します。

1. 資格登録と所属手続き

行政書士試験に合格後、日本行政書士会連合会への登録が必要です。登録には以下のような条件と費用がかかります。

  • 登録料・入会金・会費(全国平均で20〜30万円程度)
  • 事務所所在地の確保(自宅可)
  • 必要書類の提出(略歴書、誓約書など)

2. 開業初期に必要な準備

  • 名刺・Webサイトの作成
  • 業務分野の決定(ターゲット市場の明確化)
  • 事務機器(パソコン、プリンター、複合機など)
  • 帳簿・会計ソフトの導入

特に重要なのが自分の専門分野や強みを明確にすることです。競合との差別化がしづらい行政書士業界では、「〇〇に強い行政書士」として認知されることが成功のカギになります。

3. 営業と集客の方法

開業してもすぐに依頼が来るとは限りません。以下のような集客活動を継続的に行う必要があります。

  • SEOを意識したホームページ運営
  • SNS(Twitter, Instagram, YouTube等)での情報発信
  • 地域商工会、士業交流会への参加
  • ポータルサイトや広告媒体の活用

特に近年では、ネット集客の成否が業績を大きく左右する傾向にあり、マーケティングスキルの有無が問われています。

まとめ|行政書士の可能性と将来性

行政書士は、法的支援の最前線で活躍できる国家資格です。官公署への手続き、法的文書の作成、外国人支援、相続問題など、多様なフィールドが用意されており、自分の得意分野を活かして専門家として活躍することが可能です。

  • 対応可能な業務は年間1000種類以上
  • 独占業務を持ち、法的効力ある書類を作成できる
  • 独立・開業がしやすく、副業・転職にも対応可能
  • デジタル時代にも対応しやすい柔軟性がある

一方で、AIや電子申請の普及により、業務の自動化や競争激化も予想されます。こうした中で行政書士として生き残っていくには、専門性・人間力・マーケティング力の三本柱が求められます。

資格を取得した先にある未来は、あなたの努力次第でいくらでも広がります。行政書士という資格を活かし、唯一無二の専門家として社会に価値を提供していきましょう。